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これから定期的に体のことについてのちょっとしたコラムを発表していきます。
皆さんのお役にたてるようなものにしていきたいと思いますので、体力つくりや、子供の成長について、中高年の運動の目安など、ぜひ参考にしてみてください。

vol.10 トレーニングの原理・原則

最近、トレーニングのタイミングや量についてよく質問があります。
今回はトレーニングをする際の初歩の考え方、「トレーニングの原理・原則」を解説したいと思います。
トレーニングの原理は必ず守られなければならない絶対条件とも言えます。できれば覚えてしまいましょう!

「一日のうちの何時、どのくらいトレーニングすれば良いですか?」

この質問の答えは性別?や年齢?、試合期なのか?トレーニング期なのか?などいろいろな条件により変わってきます。
そもそもトレーニングとは「身体に運動負荷を与えること」と言えます。この運動負荷を一定のタイミングで与え続けることで、身体が適応しようと強くなっていきます。この運動負荷を与えることで身体が強くなることが過負荷の原理です。

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また、陸上の長距離選手が重量挙げのトレーニングをしてもタイムが良くなることは期待できません。各種目別の適したトレーニングをする必要があります。これが特異性の原理です。

トレーニングを止めてしまうとせっかく鍛えた身体は元の筋肉の無い状態に戻ってしまいます。これが可逆性の原理です。

幼少期には自体重を負荷にするなど、あまりバーベルや器具を使うような本格的な筋力トレーニングはするべきではないといわれています。性別や年齢に応じたトレーニングが必要で、これが適時性の原理です。

これらのようなトレーニング原理を理解したうえで日々のトレーニングをしていくことが、ケガの少ない、合理的なトレーニングにつながると言えるでしょう。

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次は「トレーニングの原則」です。原則はトレーニングを効率良く行うための必要条件と言えます。
まず漸進性の原則です。トレーニングは続けていくうちに身体の適応能力が働き、同じ運動強度では効果が見いだせなくなっていきます。例えば、最初は腕立て伏せが20回しかできない場合でも、毎日続けるうちに20回は軽くこなせるようになっていきます。そこで25回、30回と回数を増やしていくことでトレーニング効果がますます表れてくることになります。
次は全面(全身)性の原則です。上半身のみ、下半身のみ鍛えるのではなく、全身をまんべんなくトレーニングすることが大切です。
意識性の原則です。何のためにトレーニングしているかを理解して行うことで、トレーニング効果に差が出てきます。
個別性の原則です。一人ひとりはできる回数、負荷の強さなどには個人差があります。みなが横並びのトレーニングではなく、一人ずつに対応したトレーニングを行いましょう。
反復性の原則です。トレーニング効果は継続して行っていくことで、効果が表れます。3~4週間は継続して行う必要があります。

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vol.9 夏こそアクティブレスト!

毎日暑い日が続きます。そろそろ夏バテの方もいらっしゃるのではないでしょうか?今年は熱中症が猛威をふるっており、一週間で500人以上の方が倒れたとの新聞記事がありました。十分に体調管理をして、夏を乗り切りましょう!
さて、みなさんは週末の休みの日にはどのようにお過ごしですか?ついつい、暑さに負けてダラダラ、ゴロゴロしていませんか?しっかり体を休めることは大切ですが、今回はあえて体を動かすことで休養の効率を上げるアクティブレストを紹介します。

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アクティブレスト(積極的休養)とは?

今年のように猛暑が続く場合、体を休めることは非常に重要です。例えば15~30分程度の昼寝を生活に取り入れることで仕事の効率アップや、気持ちのリフレッシュができます。しかし、何もしないで休む完全休養よりも、軽く身体を動かした方が身体の疲れは取れやすいのです。例えば軽い有酸素運動を行うと、血液循環が良くなり、疲労物質や老廃物の排泄が促され、身体の回復機能が高まります。プロ野球選手やJリーガーがクールダウンなどを行うのも同じ理由からです。

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週末にはアクティブレストを!

毎日の仕事疲れやストレスから、週末くらいはゴロゴロしていたい気持ちはよく理解できます。しかし、お昼まで寝坊していて、気がつくとすでに夕方!なんていかにももったいない気持ちになりませんか?しかも案外疲れも取れていない気が・・・。
ここで少し午前中の涼しい時間にウォーキングやジョギングを取り入れてはどうでしょう?有酸素運動を行うことで、疲労物質が身体の外に出やすくなることはもちろん、精神的にもストレスがスーッとなくなる気がします。普段から運動不足の方は特にリフレッシュ効果が実感できると思います。また、有酸素運動中は割りと考え事をすることに適しており、いつの間にやら考え事に整理がついていることもしばしばです。
ぜひ身体を動かして、心身共にリフレッシュしてみましょう!ただ、この季節の運動は、暑さ対策、水分補給を忘れずに!30分にコップ1杯くらいを目安に水分を補給してください。

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vol.8 お酢を飲むと柔らかくなる?

寒い時期は身体も硬くなりがちです。私もちょっと柔軟体操・・・「イテテッ・・。」と、こんな感じですかね。(苦笑)
よく「身体が硬い。」「身体が柔らかい。」という言葉を使ったり、聞いたりしますが、そもそも「身体が硬い。」とはどういうことなのでしょうか。

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筋肉の強さとの合わせ技!

身体の硬さは、主に筋肉の強さと硬さに左右されます。例えば、足首の関節を曲げるときは、前頚骨筋というすねの前面(弁慶の泣き所の周り)にある筋肉が収縮し、反対にふくらはぎの筋肉が引き伸ばされます。足首が硬いというのは、前頚骨筋の筋力が弱いか、ふくらはぎの筋肉が硬くなっているかのどちらかということになります。これを解決するには、関節を曲げる筋肉と伸ばす筋肉のバランスを良くすることがポイントとなります。そして、身体全体を柔らかくするには、全身の筋力のバランスを取ることが重要となります。筋力バランスの取れた身体は、しなやかでダイナミックな動きができるようになります。

身体を柔らかくするには毎日の酢の物を!?

よく「酢を飲むと身体が柔らかくなる。」と言いますよね!でも、身近にいます?酢を飲んで柔らかくなった人・・・、残念ながらいないんですね。煮魚などで酢を入れると骨まで柔らかくなりますが、人間が酢を飲んでも柔軟性向上には関係ありません。
先にも書いたように、柔軟性には筋肉の状態が大きく影響を及ぼしますので、食事が関係するとしたら、筋肉づくりにかかわるタンパク質やビタミン類などがあげられます。

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ストレッチが一番!

柔軟性を高める効果的な方法はストレッチングです。ストレッチとは「伸ばす」という意味で、ストレッチングはその名詞形です。したがって柔軟体操として行うストレッチングは筋肉や腱などを伸ばす、という意味で使われます。
また、ストレッチングには反動をつけて動的に行うものと、反動をつけずにしばらく伸ばし続ける静的なものがあります。どちらも効果的ですが、動的なストレッチングは準備体操として、静的なストレッチングはクールダウンとして行う場合が多いようです。
身体能力の中で、最も効果が出やすいのが柔軟性の向上です。疲労回復にも効果的ですので、日常的にスポーツをしない人でもストレッチングを日課にしてみてはいかがでしょうか。

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vol.7 成長痛

ある中学生の女の子とそのお母さんが治療にこられました。
「この子は膝の下が痛いと言うんです。たぶん、成長痛だと思うんですが、大丈夫ですよね?」
よく「成長痛は心配いらない」「成長痛だからそのうち治る」なんて子供に言い聞かせてるお母さんを見かけます。
本当に「成長痛」は問題ないのでしょうか?
そもそも「成長痛」とはどんな痛みなのでしょうか?

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10歳以上に成長痛はない!

成長期の子供に多い原因不明の痛みを成長痛という言葉で無理やり納得しておられるよう親御さんが多いように思います。
おおよそ成長痛の定義は以下のように考えます。
「2~7歳以下の小児期の夜間に起こる、原因不明の下肢の痛み。」
夕方から夜になると痛みを訴え、朝になると何事もなかったように元気に活動し始めます。レントゲンなどの画像検査や血液検査などで詳しく調べても特に異常は見つかりません。そもそも「成長痛」という言葉は1823年頃に発表され、先進国で成長と痛みの関連やリウマチとの関連などが詳しく研究されました。その結果「正常の成長過程において、激しい痛みを伴う成長など存在しない。」という考えに統一されてきました。
もともとは下肢痛だけに使われていましたが、いつの頃からか成長期に見られる原因の特定できない四肢関節周囲の痛みを「成長痛」と呼ぶ風潮が出てきました。さらに近年では「成長期のスポーツ障害」と「成長痛」が混同されているケースも多いようです。
10歳を過ぎると通常は「成長痛」は見られません。スポーツをして痛みがあり、その原因に心当たりがない場合は、骨軟骨障害や何らかの疾患を疑うべきです。

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もしかしたら不安の現れ

「成長痛」はいろいろと検査や診察をしても明確な異常が見つからない、一定期間(約3ヶ月程度)の経過観察をしても症状が重篤にならず、熱感や発赤などの炎症がないときに最終的につく診断です。
成長痛を訴える子供の環境を調べてみると、下の子供が生まれたとか、母親が勤めに出だした、引越をしたなどの家庭環境の変化が多いようです。今までと家の中の様子が違い、なんとなく不安を感じていることが「成長痛」の原因と考えても良いかもしれません。ただ、決してウソや仮病ではなく、環境変化にうまく適応できずに戸惑っている正常な心理反応だといえるでしょう。本当に痛いのですから、間違ってもウソだと決め付けたりしないようにしてください。

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特効薬は「お母さんの手」!

シップ薬も薬も効果がないのであれば、どうすればよいのでしょうか?
最も効果があるのは「お母さんの手」です。じっくりと話を聞いてあげて、そばで添い寝してさすってあげることです。これを繰り返すことで、子供は安心し、いつの間にか痛みを訴えなくなるでしょう。成長痛は器質的な問題がなくとも、心で痛みを感じる心因性の痛みなのです。

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vol.6 背が伸びる

治療を受ける患者さんからたまに質問されます。「先生、うちの子の身長を伸ばす方法ないですか?」
なかなか悩ましい質問です!バスケットボールやバレーボールをやると身長が伸びる、とも言いますね。中学校や高校で順調に背が伸びた子の親御さんが「うちの子はバレー部でしたから、背が大きくなりました。」なんてことも聞こえてくる話です。
なぜバレーやバスケットボールをやると背が伸びるのでしょうか?
ほかの種目では身長は伸びづらいの???

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背が伸びる=骨が伸びている?

背が伸びるということは「骨が伸びる」ことです。骨の末端部分には骨端線という部分があり、この部分は軟骨細胞(主に破骨細胞と骨芽細胞)が集まってできています。これらの細胞は成長ホルモンの働きによって増殖し、層のように積み重なることによって骨が伸びていきます。これが「背が伸びるメカニズム」です。
バレーボールやバスケットボールをやっている人たちは背の大きい人が多いですね。これは競技の特性としてジャンプ動作が多いことが原因と思われます。ジャンプという運動動作を通して膝に刺激が加わり、その刺激信号が脳に伝わることで成長ホルモンが分泌されやすくなります。すると破骨細胞が古い骨を壊し、その上に骨芽細胞が増殖することで骨が伸び、身長も伸びていくのです。また、ジャンプ系の運動だけでなく、体を曲げる、反らすなどの全身運動でも身長は伸びやすくなるとも考えられます。これは全身運動の刺激により栄養の循環が促進され、骨成長の促進も進むと考えられるからです。

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寝る子は育つ!

昔から言われるように「よく寝る子は、よく育つ」です。就寝後の約30分後に訪れるノンレム睡眠により、成長ホルモンは最も分泌されます。この時の睡眠が良いものであれば有るほど成長ホルモンは分泌されやすいと言えます。ですから就寝前に運動をしすぎたり、テレビや映画で興奮したり、というのは避けた方が良いでしょう。また、昼間にしっかり運動をして疲れることで、夜は熟睡することも重要になります。
さらに、きちんと栄養を取ることも当然ですね。骨を作るカルシウムや、軟骨細胞の原料となるタンパク質をしっかりと取りましょう。

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筋トレをすると背が伸びない?

よくバーベルなどの「筋トレをやると背が伸びなくなる」と言いますよね。これは実際のところあまり根拠がありません。むしろ適度な負荷のトレーニングは骨の発達に良い刺激が加わり、身長の伸びを促すと考えられます。
ただ、成長期では体が未成熟なため、本格的なウェイトトレーニングは行わず、自分の体重を負荷としたトレーニングが良いとされています。
成長期にはその時期に発達しやすい部位があり、その時期に適切なトレーニングを行う方が効率が良いと言えるでしょう。

小学校高学年~中学生まで
心肺機能が発達しやすい → 持久系のトレーニングが良い
中学3年程度~高校2年生まで
だんだんと筋肉がつきやすくなる → 中程度の負荷のトレーニング/しゅんぱつ系のトレーニング
高校2年生~成人
ほとんど骨格ができてくる → 本格的なウェイトトレーニング可能
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vol.5 免疫力を上げる食事

ますます猛威をふるうインフルエンザ!いろいろな場所で見かける手指消毒液もおなじみとなりました。幅広い年齢層で犠牲者が出ている新型インフルエンザ。基礎疾患のなかった20歳代の方でも犠牲になっていたのには危機感が強まりましたね。
なぜここまでおそろしいかというと、新型であるため体に免疫力がなく、うまくウイルスに対応できないことが原因となります。こうなるともっとも確実な対策は風邪をひかないこと!今回は免疫力をアップさせる食事のお話です。

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免疫ってなに?

みなさんも「免疫」という言葉自体は耳にしたことがあると思います。免疫とは体に侵入してきた病原体やウイルスなどを攻撃して自分の体を守る機能のことで、その働き方や種類はたくさんあり、役割分担が決まっています。おもに免疫をつかさどるのは白血球で、大きく分けてリンパ球、単球、顆粒球に大別できます。
病原体はほとんどの場合、大気と触れている目、鼻、口、のど、皮膚から浸入します。病原体の侵入を防ぐために目や鼻は粘膜で覆われており、粘膜に病原体が付着すると白血球が病原体を食べてしまいます。(貧食作用)
この時に働いた白血球は病原体とともに死滅し、痰や膿として体外に排出されます。
この貧食作用は常に行われていますが、健康状態が良好な場合には自覚症状がありません。しかし、免疫力が低下していると粘膜に炎症症状が起き、鼻水やのどの痛み、腫れ、せきといった風邪症状が現れます。また、下痢も腸粘膜での炎症反応であり、病原体を排出します。

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熱は下げない方が良い?

風邪や細菌感染の症状の一つである発熱は、白血球と病原体とが戦って熱を発生させている面もありますが、白血球がより活性化するような体の反応でもあります。白血球は平時の体温よりも1~2度高い温度で活性化するため、白血球にとって有利な環境になります。むやみに熱は下げない方が良い!とはこのためだと思います。

免疫力が下がるのはどんな時?

免疫力が低下する理由としては疲労の蓄積、加齢、栄養不足、ストレス、環境悪化、天候などがあげられます。特に免疫細胞は食事から得られる栄養素で産生、活動しているため、栄養不足は免疫力低下の原因となります。また、ストレスも交感神経を優位にさせるため、ストレス過多状態が長く続くと免疫力が低下します。大気汚染による環境悪化や、冬場の乾燥なども免疫力に影響します。

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免疫力アップの食事

免疫力を高めるには、免疫細胞を活性化させることが必要で、【1】鼻やのどなどの粘膜を強化する、【2】腸内環境の調整、【3】疲労を貯めない、などが活性化する方法となります。

【1】鼻やのどの粘膜強化 → ビタミンA、C
粘膜が弱くなると病原菌は簡単に体内に侵入します。粘膜の強化は免疫力の向上につながるため、粘膜の構成要素であるビタミンAを摂取しましょう。また、ビタミンCはストレスにも抵抗し、抗酸化の作用にもすぐれています。
【2】腸内環境の調整 → 乳製品、発酵食品、オリゴ糖
腸内での免疫力を高めるには腸内環境を整える善玉菌を増やすことが重要で、ヨーグルトやチーズなどの乳製品、キムチや納豆、みそなどの発酵食品、善玉菌のエサとなるオリゴ糖などを摂取しましょう。
【3】疲労を貯めない → ビタミンB1
十分に休養を取り、疲労回復のビタミンであるビタミンB1を積極的に取りましょう。

主な栄養素と食品

タンパク質
魚、卵、肉、大豆、乳製品
ビタミンA
ウナギ、レバー、にんじん、モロヘイヤ、カボチャ、ホウレンソウ
ビタミンB1
豚肉、ハム、タラコ、大豆、玄米、海苔
ビタミンB2
レバー、ウナギ、ブリ、卵、乳製品、モロヘイヤ、納豆
ビタミンB6
マグロ、カツオ、鮭、牛レバー、鶏ササミ、ニンニク
ビタミンC
赤・黄ピーマン、ブロッコリー、カリフラワー、ゴーヤ、ジャガイモ、オレンジ、グレープフルーツ、イチゴ
ビタミンE
植物油、ナッツ類、ゴマ、ウナギ、モロヘイヤ、カボチャ
亜鉛
カキ、ホタテ、タコ、カニ、牛肉(モモ、赤身)、玄米、納豆
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vol.4 頭が良くなる食事

最近、買い物に行くたびに「あ、〇〇買うの忘れた!」ということがあります。また、スーパーで会った方に「あ~、こんにちは・・・え~と、(名前が出てこない。)」ということも。年々、低下する記憶力や判断力!我ながら自分が嫌になります。こうした脳の衰えを防ぐ食事ってあるのでしょうか?そもそも頭を良くする食事ってないものでしょうか?

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まずはタンパク質を!

脳の働きを良くするには、脳細胞の働きを良くすればよいと考えられます。ということは脳細胞にとって栄養となるものを多く食べることで、脳細胞の働きを良くすることができるはずです。そして、脳も体の一部ですから、その働きは食事の影響を受けます。
栄養素として、まず考えられるのは脳細胞の主成分であるタンパク質です。脳や脊髄などの神経系は、他の組織に比べて発育速度が速いので、乳幼児から卵、乳製品、大豆製品、魚類などのタンパク質をバランスよくとって、丈夫な脳をつくっていくことが大切です。特におすすめなのが大豆と魚です。
大豆は「畑の肉」と言われるようにタンパク質を多く含むだけでなく、「レシチン」などのリン脂質も含みます。近年、このレシチンが記憶力、集中力を高めたり、認知症の予防、改善に効果的であることがわかってきました。脳内の情報は、神経細胞のシナプスを経由して隣の細胞に伝達されるのですが、その際、アセチルコリンという化学物質が情報を橋渡しします。レシチンは、このアセチルコリンの原料になる物質で、レシチンが増えるとアセチルコリンも増え、その結果、細胞同士の情報伝達がスムーズになるわけです。ただし、大豆だけでは不十分です。大豆はレシチンをたくさん含みますが、タンパク質の再合成に必要なメチオニンという必須アミノ酸が少なく、レシチンだけではタンパク質を効率良く再合成できません。それを補うには、卵を一緒に摂取するのが良いでしょう。卵入りの納豆などは最も良いと考えられます。

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魚類も頭の働きを良くする!

また、サバやイワシなどの青魚や、ウナギ、マグロなどには「ドコサヘキサエン酸(DHA)」という不飽和脂肪酸がたくさん含まれます。この物質も頭の働きを良くするといわれています。神経細胞のシナプスにDHAが多く含まれていると、細胞膜がやわらかくなり、シナプスが放出されやすくなると考えられます。
このDHAは魚の脂に多く含まれるもので、煮たり焼いたりすると約20%、揚げ物にすると約50%のDHAが失われると言われます。効率良くDHAを取るためにはお刺身が一番ですね。また、魚にはDHAのほかにエイコサペンタエン酸(EPA)と呼ばれる不飽和脂肪酸が含まれており、脳梗塞、心筋梗塞の予防、老化防止、アレルギー喘息予防などに効果があることがわかっています。

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vol.3 ウォーミングアップ

近年は生活習慣病予防との関連から体を動かすことへの関心が高まっています。週末のジョギングやウォーキング、長野県では週末登山なども盛んです。この時期に週1回でも運動することは気持ちが良いですね。でも、休日に張り切って体を動かした反面、月曜日から腰や膝が「アイタタッ・・・・」なんてことはないですか?
運動することで体は強くなりますが、同時に疲労によって体がつらい面もあります。また、つい力が入りすぎて足や腰をひねった!なんてことも。今回は運動によるケガや疲労を軽減することができるウォーミングアップについてです。

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ウォーミングアップの目的(自律神経の切り替えが重要)

そもそもウォーミングアップの最も基本的な目的は、自律神経の切り替えです。自律神経とは体が活発に動いている時に働く交感神経と、休憩時に働く副交感神経を指します。運動時は体温上昇や、心拍数の増大、胃腸の活動制御など運動に適した状態になっていることが必要であり、交感神経が働いている状態でなければなりません。ウォーミングアップは体にこの切り替えをさせる重要な働きなのです。

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ウォーミングアップの方法

みなさんはウォーミングアップの目安をご存知ですか?週末はテニスを楽しむと言う患者さんにたずねたところ、5分くらいストレッチをします!なんて言われました!?これはウォーミングアップとしては充分ではありません。
先に述べた交感神経の活動を促進させることからスタートすると考えて、腹式呼吸(空気を吸ったとき、胸部ではなくお腹に空気を入れる呼吸)から始めましょう。平常時は約60%の血液がお腹に集まっています。腹式呼吸で腹圧が上がると血液が全身に循環し、運動に適した状態になります。そこから額に軽く汗をかく程度までジョギングなどで体を温め、そのあとストレッチングに移ります。ストレッチも一つのストレッチに20~30秒かけて関節、筋、腱が伸びる感覚を感じるようにして行います。そのあと少しずつプレーに入っていくようにしていきます。どのくらい行えば良いか、という目安は人それぞれで簡単ではありませんが、この時期であれば20分くらいはウォーミングアップに時間をかけましょう。

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vol.2 間食(補食)してケガの防止を!

学校で給食以外の時間におやつを食べる!基本的にはダメですよね。でも部活や運動をやっている子はどうでしょう?ハードな練習をこなしている子供でも同じように間食は禁止で良いのでしょうか?

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間食(補食)してケガの防止を!

スポーツ選手の場合、運動をしない人に比べてエネルギー消費量が一日に1000~2000kcal多くなります。当然、三食の食事だけでは必要なエネルギーが足りず、その日の疲れを回復できていないことが多くあります。また、部活をやっている子供の場合、夏場などはあっさりしたものしか食べたくない、練習後にすぐに食事となり、意外と量が食べられない、ということも多いようです。これでは成長期に必要な栄養を取ることができていないばかりか、毎日の部活の疲れが取れず、夕食後に机に向かうことができない、授業中にも集中して話を聞くことができない、ということにもつながります。
また、部活の練習中にケガをする場合に特に多いのが練習の後半に疲れから集中力が欠如し、その結果ケガをするケースです。それもケガをした本人は集中して練習に取り組んでいるつもりなのですが集中しきれていない。これは脳に行く糖分が足りなくなり、充分に集中しきれないことも要因していると思います。

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どのタイミングで何を食べるべきか!

疲労回復や成長期の身体づくりの面から食事を考えた場合、糖質のほかにたんぱく質やミネラル、ビタミン類なども通常の1.5~2倍くらい多く取る必要があります。間食は菓子類などで空腹感をまぎらわせるのではなく、三食で取りきれないエネルギーと栄養素を満たすための「補食」と考えるべきです。
間食におすすめの食品としては、例えばミックスサンドウィッチとオレンジジュースや牛乳たっぷりのカフェオレというように、糖質、たんぱく質、ミネラル、ビタミンなどを総合的に補える食品を選ぶと良いと思います。その他にはおにぎりや巻きずし、惣菜パン、肉まん、ヨーグルト、チーズ、くだもの、野菜ジュースなども適しています。練習前であれば少し糖質が多い食品が良いでしょう。時間がないときでもバナナ1本、おにぎり1個程度を食べるだけでも集中力が最後まで保てると思います。
食品を食べてから体内で吸収し始めるまでの時間が約30分です。通常は授業が終わるとすぐに部活の準備は入ると思いますので、あらかじめ補食を用意しておき、準備の前に手早く食べると良いと思います。また、練習終了後に補食を取ることも重要です。運動で壊れた体の修復を助けるために、練習終了後はできるだけ早くおにぎりや惣菜パンなどを食べると良いとでしょう。これは土日に試合を多くこなしているスポ小の子供達も同じで、試合後に自宅に帰る車の中ででも何か食べるようにすると良いと思います。ただ、あくまでも三度の食事で栄養摂取することが基本ですので、間食で食べ過ぎないことに注意が必要です。

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vol.1 運動神経は遺伝する?

「自分は運動できたのに息子は・・・」「私の子供だからこんなもの・・・」ついつい口から出たことありませんか?親のエゴと言ってしまえばそれまでですが、やっぱり子供には勉強もスポーツも得意であって欲しいですよね!でも親がスポーツ万能なら子供も運動神経の良い子になるのでしょうか?そもそも運動神経とはどこの神経なのでしょうか?

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運動神経は遺伝?!

実は運動神経の遺伝率は10%程度!あとの90%は生まれてからの運動経験から後天的に決まってきます。つまり運動神経は育てるものなのです。一般的に運動神経とは「力が強い」「足が速い」などの単一の能力を示す場合は少なく、「すばしっこい」「ボールをとるのがうまい」「身のこなしが良い」などの体の使い方の調整力を意味しています。つまりその場のスポーツシーンに応じた体の使い方ができることが、運動神経が良いということになります。
 一般的にスポーツテストでは運動能力を「筋力」「持久力」「柔軟性」「敏捷性」の4つに分けて測定します。この4つが優れていることはつまり体力が有る!ということになり、この4つをうまく総合的に使いこなす能力が高いことを運動神経が良い、と言う訳です。

外遊びが好きな子供は運動神経が良い

4つの各能力を使いこなす調整力が運動神経だと申しましたが、運動神経を育てることとどういう関係があるのでしょうか?運動神経という調整力とは、脳のイメージした指令を正しく全身の筋肉に伝える能力です。つまり神経が発達しているかどうかということになり、この神経系は生まれてからの運動経験でどんどん発達していくものなのです。ということは、どんどん体を使って遊んでいる子供ほど運動神経が良くなっていくと言えます。例えば鬼ごっこの場合、子供たちはあらゆる方向に逃げ回り、急停止や全速力を繰り返します。また、鬼との距離を目で測り、相手とかけひきするなかで体を入れ替えて走り回ります。このように鬼ごっこの中にはいろいろな種類の運動刺激が含まれているといえます。また、体のバランスを鍛える遊びは一輪車が人気です。一昔前では竹馬でしたが、今はどこの小学校でも一輪車が備えてあります。他にもドッジボールや缶けりなども良い遊びといえます。このように色々な体を使った遊びを経験していくことで、子供たちの運動神経は伸びていくのです。

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もっとも運動神経が発達するゴールデンエイジ

経験することで運動神経は発達すると申しました。しかし、成長期という言葉がありますが、運動神経にも成長期はあるのでしょうか?何歳ごろが発達する時期なのでしょうか?
ゴールデンエイジという言葉があります。最近耳にすることが多くなった言葉ですが、厳密にはプレ・ゴールデンエイジ(6~9歳)とゴールデンエイジ(10~12歳)に分けて考えます。

好奇心旺盛なプレ・ゴールデンエイジ

この時期は神経系が最も発達する時期です。一つの動作で一つの神経回路がつくられるというくらい、神経回路の配線がものすごい勢いで進みます。運動神経の基礎はこの時期につくられるため、できるだけ多くの種類の運動や動作を経験させ、神経回路の数を増やすと共に、それらを複雑に張り巡らせることが重要です。また、この時期はとにかく吸収力と好奇心が旺盛です。一つのことに信じられないほどの集中力を見せることがありますが、それは長続きせず、新しいものに目移りしがちです。これは、彼らが神経回路にさまざまな刺激を与え、配線を増やしていこうとする本能の表れなのです。
したがって、「楽しければ集中する」しかし「飽きっぽい」という相反する特徴を踏まえた上で、子供が楽しいと感じる運動経験を数多く積ませることが重要です。

完成していくゴールデンエイジ

この時期は神経系の発達が完成に近づいていきます。一生の中で最も運動神経が発達し、運動能力も急速に向上します。また、短時間で物事を習得できる「器用さ」と、環境の変化に応じて行動を変えられる「応用力」も併せ持ちます。ですから、さまざまな動作、運動を体験させつつ、子供が興味あるスポーツの専門的な技術を習得するのに絶好の時期となります。
ただし、筋力、持久力などの体力面は未発達なため、パワーやスピードは身につきません。ですから、その二つは求めすぎず、大人になったときに財産となる技術を身につけることが重要です。

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以上のように、子供の成長に応じた運動経験を積ませることで、子供は体を動かす楽しさを覚えていきます。私たち大人はその成長の法則に逆らうことなく、正しい知識を持って子供の成長を見守っていきましょう。

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